みなさまの疑問&質問にニャルフがお答え。
オイルの事を中心に、クルマに関する「あんな事」「こんな事」を掲載中!
お役に立つ情報が満載です。
トルセンデフに特殊な粘度のギヤーオイルは必要ありません。ごく普通に使用されるギヤーオイルの粘度「75W-90」や「80W-90」がメーカーから指定されています。ノンスリだからとプレート式に使用するような粘度の高い「85W-140」は必要ないのです。
粘度の選定はご自分の車に付いてくる「取り扱い説明書」に従ってください。参考までに、トヨタでは「85W-90」を指定している場合が多くみられます。
ここで重要なのはギヤーオイルの品質を表わす記号「GL-5」を必ず選ばなければならないことです。高負荷時に高いトルクがかかるため「GL-5」より穏やかな使用条件を想定している「GL-4」や「GL-3」の使用は避けてください。
トルセンとは「Torque Sensitive」(トルクに敏感)という意味の英語を固有名詞にアレンジした登録商標です。別名では「トルク感応式」と呼ばれている新時代のノンス リップデファレンシャルで、最近のスポーツタイプの車両に搭載されはじめました。トルセンは今まで最も普及していた「プレート式」の原理とまったく異なっ た作動をします。
プレート式はトラクションを失ったタイヤの空転を防止しますが、トルセンは高グリップのタイヤへより多くのトルクを分配しま す。プレート式はトラクションを失ったホイールが空転したり、内輪差が発生して初めて作動を開始するのに対して、トルセンは常に両輪のトルクを監視しなが ら作動していますので、タイムラグ(作動の開始遅れ)がまったくありません。したがって、理論的にはより優れた方式といえます。
ノンスリはコーナリング中に大きな働きをするわけですが、トルセンはたとえ直進中であっても両輪のトルク配分を常に適正に補正しますので、大出力の後輪駆動車の直進安定性に大きく貢献します。
トルセンは最近になって普及したため、あまり一般的ではありません。理由は複雑なカーブを描くギヤー歯の加工に高度な技術力が必要だったからです。しかし、この難問も我が国の高度な工作技術で解決されています。
1995年にトヨタ自動車はこのトルセン式に似た「ヘリカル LSD」を新たに開発、新型カローラに搭載しました。この例を見てもおわかりのとおり、今後のLSDの方向性は「トルク感応式」に移行するかも知れません。